朝出社してみると、先日めでたく全国放送に生出演を果たしたおQさんが、
何故かスーツ姿で立っていた。

よく見るとその胸には燦然と輝く、
歌うカナリア印の「NHKのど自慢バッジと、ネクタイピン」が!!

しかしどうにも様子がおかしい。
トロフィーを掲げる表情にも何か意味深な陰りが見られる。

誰もが胸にひっかかるものを持ちながらも、
その鬼気迫る面持ちに、なかなか口に出せずにいると、
本人が意を決したように、それでいて、
高ぶる興奮を押し殺すように、とつとつと語り始めた。
「あたい、会社を辞めます・・・」
そう言いながら袂からスッ・・・と一枚の封筒を取りだすと、
そこに書かれていた「辞表」の2文字に、
居合わせたスタッフ全員がハッと息をのみ、
「何故、おネエ言葉なのか?」ということに
突っ込むことさえ忘れてしまっていた。
辞表の中に書かれていた詳しい内容は
ここでは明らかにすることはできないが、
どうやら、
命を懸けて望んだNHKのど自慢に、
”鐘2つ”
という結果しか残せなかったことに対して、
独りよがりなプロ意識が傷つき、
その責任を取るためには
辞職という方法しか思いつかなかった、ということらしい。
相変わらず、不器用な漢だ。
「ちきしょう!こんなことってあるかよ!こんなことってあるかよ!・・・」
そう誰もが拳を固め、心の中でリフレインさせていたとき、
おQさんの真っ直ぐな視線の先に立っていた
代表どんまいが、
何とか平静を保とうと装いながらも
明らかに困惑の表情を浮かべつつ、
その茶封筒を受け取って、何とか話を切り出した。
「ま・・・、まあ、これは一旦受け取っておく。
ただ、お前は・・・いやおQくん。君、これは本気か?」
するとおQさんは、最後の「か?」を食い気味に、
「あたい、本気!」
と足下にあった小石をポ〜ンと蹴りながら
すねたように呟いた。
しばしの沈黙が続いた後、
それ以上言葉をかけあぐねていたどんまいが
振り向きながら
「とりあえず、これはしばらく預からせてもらうよ・・・」
と低い声でつぶやくと、
ゆっくりと歩き出し事務所のドアへと向かって歩き出した。
取り返しのつかないこの状況に、
「冗談です!」って言ってくれ〜!おQさん!!
と誰もが思わずに居られなかったが、
無上にも二人の距離は一歩、また一歩と広がり続け、
そしてついに、
どんまいが事務所のドアを閉めた・・・その瞬間!!
『ぃぃぃいやぁっほぉ〜〜ぅ!!!!
ついにおQが出ていくぞぉ〜いっっっ!!!!!』
という、今までにどんな合格発表会場でも、
選挙事務所でも聞いたことがないような
歓喜の雄叫び、そう、まさに雄叫びが丸聞えに聞えてきたのだった。
そしてその声に、
そこに居合わせたスタッフ一同は
我に返ったように顔を見合わせ、
こぼれんばかりの笑顔で抱きあって喜びあったのであった。
めでたしめでたし。
(後日談)
おQさんは、その足で履歴書を買いに出掛け、
めでたく再びウォンツに再就職を果たしました。
その後のおQさんの運命はいかに。。。
